格闘技イベントKー1の前社長で、空手の正道会館元館長でもある石井和義容疑者(49)が脱税容疑で東京地検特捜部に逮捕された。
まず、事件を理解するためには、検察と国税の関係から理解しなければならない。 脱税事件は国税局が脱税の実態をつかみ、検察に告発することで初めて事件が成立する。このため逮捕するのも警察ではなく検察だし、拘留されるのも東京拘置所となる。検察にとってみれば、国税局は仕書をくれる大切なクライアントであるし、逮捕権のない国税局としては検察は頼れる実働隊といったと二るか。両者はワンセットで機能する非常に密接な関係なのだ。
一方で、検察を辞めて弁護士になるやつが大勢いる。いわゆる「ヤメ検」だが、彼らにとって最もウマミがある仕事が、実は脱税事件の弁護なのだ。弁護の腕はなくとも前職で培った人間関係を利用すれば、被告に有利な処分を取れる可能性が高いからである。国税に追及され逮捕される危険性がある者はヤメ倹に弁護を依頼するケースが多い。事実、石井容疑者も某大物ヤメ検弁護士に相談していた。そして、その思惑はうまくいったかに見えた。少なくとも昨年末までは。

彼らの筋書きはこうだ。脱税の時効は3年なので、時効が成立していない部分は認め、ある程度の罰則金を支払う。刑法に触れる部分も一部は認めて在宅起訴はされるものの、ヤメ横の顔を使って最後は執行猶予で逃げ切るはずが、結果
的にこの作戦は失敗に終わり、石井容疑者は逮捕された。一部認めた部分にまでウソがあることがバレてしまったのだ。石井容疑者はマイク・タイソンを日本に呼ぶのに失敗した違約金を払ったから収入はない、というストーリーを作り、この主張を認めさせるために裁判まで起こさせたのだが、すべて彼の仕組んだ芝居であることが見破られた。
裁判を起こして和解するという戦法自体は、税金逃れの手段としては間違いではないし、俺も過去に何度か見聞きしたことがある。
例えば、こんなやり方がある。ある人間に「宮崎学に金を貸しているから返せ」という裁判を起こさせる。俺は債務を認めて和解し、債権者側の弁護人に直ちに金を振り込む。しかし、弁護人自体が実は俺が実質的に雇った人間で、自分への弁護士費用と債権者への手間賃を抜いた金額を俺に返還する。金が宮崎→弁護士(十債権者)→宮崎と渡ることで、闇に消えてしまう。要は、裁判所が昭めたマネーロンダリングといってもいいだろう。
今回の事件も基本的にその手を使い、ヤメ検まで動員したにもかかわらず逮捕されたのはなぜか。俺のもとに入った情報によると、くだんの大物ヤメ倹が出てきたことで東京地検が反発したようなのだ。
俺に脱税指南を打診してきたが この大物ヤメ検は、名前は出ていないが同じような手を過去に何度も使っていたという話がある。さらに、かつて話題になった芸能プロダクション絡みの事件にも絡んでいたとの情報もある。恐らく今回も、自分が出ていけば検察は抑えられると思ったのだろう。
しかし、世の中、2度あることは3度あるとは限らない。中には、検察の正義はどうなるのか、という青い検事もいたに違いない。いや、純粋に、1人で儲けすぎていることに対する嫉妬と恨みが検察側にたまっていたといったほうが正しいか。
いずれにせよ、東京地検は今回の事件にものすごい執念で取り組むことになった。マスコミに石井容疑者を追っていることをかぎつけられないために、東京地検に呼ぶこともせず、都内のシティホテルで書棚聴取していたというから、いかに本気であったかわかる。これではいくらヤメ検でも歯が立たない。

まあ、根本的な話をすれば、ヤメ検を使うことはもろ刃の剣なのだ。結局は一部を認めることになるからである。石井容疑者はヤメ検にさえ頼れば実刑は免れると思ったのだろうが、その認識が甘いのだ。
ヤメ検を使って確実に意味があるのは刑事事件で、明らかに違法行為を犯している場合だろう。罪は罪として認めたうえで情状をよくして、少しでも減刑を勝ち取りたいとか、どうしても保釈を取りたいという場合くらいだ。
何より税理士がかいた絵がずさんである。脱税指南をした税理士が二流だったといってもいい。タイソン招致の違約金を払った相手にバングラデシュ人を仕立て上げたのはいかがなものだろうか。物価の違いを利用して手間賃を安くあげようと思ったのかしれないが、無理筋である。それなりに信用と経済力のある人間に裁判を起こさせるべきであったし、最低限、連絡くらい取れる者にすべきだったな。証言もしてもらえないではどうにもならんで。
その点で言えば石井容疑者もかわいそうだ。恐らく弁護士と税理士に多額の指南料金を取られたのだろうが、それで逮捕されたわけだからな。ただ、ヤツ自身も大物ヤメ検に頼んで本当に大丈夫なのか不安だったらしい。実は俺のところにもあるアウトロー経由でこの件に関する相談が来ていた。去年の暮れだ。しかし、俺は断った。すでに下手な絵をかいている以上、それを全部消して新たな絵をかくのは不可能だからだ。格闘家として闘う相手を間違っだということだろう。こと頭脳戦においては検察のほうが一枚も2枚も上だったということだ。
もっとさかのぼれば格闘技で一儲けしようという発想自体、間違っていたのである。何しろ格闘技などアウトローの概念で言えば興行であり、いいかげんな見せ物にすぎん。ところが、テレビでは真剣勝負であるかのように流すことで人気を得ているというゆがんだ構造になってしまっている。そんな見せ物の中でだれが最強であるかを競うことなどまったく意味がない。タイソンだろうがホブ・サップだろうが、いくら強いといってもピストルでー発で終わり。〃真剣"とはそういうものである。
本来、格闘技とはアウトローのシノギの1つ。それをテレビと素人が権益と利権を侵したために罰が当たったということだろう。
何はともあれ、今度、俺に相談するときはもっと早い時期に相談することや。もっと高等な絵をかいてやるで。相談料は高いかな。