(アサヒ芸能5/22日号)

キツネ目事件調書

戦場でモノ拾う好奇心こそ記者の資質

不発弾爆発は米国軍需産業の製造者責任を追及せよ

 多かれ少なかれ不用心だったのは確かだが、目くじら立てて大騒ぎするほどのことと違うやろ。毎目新聞・五味宏基記者の手荷物爆発を伝えるメディアヘの感想である。

 不注意さ、軽薄さは否めない事実としてある。だが、結局は事故ではないか。少なくとも危険性を認識したうえで、それを使って何者かを殺傷しようなどとは夢にも思っていなかったはず。拾ってから空港までの間で、この記者は仲間とこの物体を投げ合っていたというのが何よりの証拠や。

 過去の歴史を振り返っても、従軍記者という者らかの"土産"を持ち帰るものなのだ。戦後の日本にアメリカ占領軍に同行してきた記者も大量 の日本刀を買いあさった。特に日本の軍人が持っていた軍刀が、美しく、しかも切れ味がいいということで人気だった。身近な話をすれば、俺のオヤジは大阪大空襲のとき墜落したB29の機体からはぎ取った機体の一部を持ち帰り、戦後のドサクサでそれを売りさばき、儲けた金で商売を始めた。戦争という一種の極限状況においては、物を拾い、それを有効利用することは人間の正しき伝統、と俺は断言する。

 イラクに人間の盾として現地入りしていた連中も、さまざまな物を持ち帰り(中にはミサイルも)、ネット上で互いの収穫物自慢をしているという話も聞く。まあ、それが自然な姿やないか。海外メディアも「ジャーナリストの戦場誘惑は消えないようだ」と、あくまでも詮ない話止まり。真顔での非難などまずない。美術館や博物館から国宝クラスの逸品を盗み出し、閤マーケットに流したジャーナリストが大勢いることから考えれば、まだマシ、ということやろな。ベトナム戦争時、死体から金めの物を奪っていく連中を見てきた海外メディアとすれば至極当然の話ではある。

 

 今後、毎日新聞がどのような社内的処分を取るかが問題になるだろうが、この程度のことで懲戒免職、自主退職などに追い込むべきではない。この一件を教訓化して、再発防止に努めれぱいいだけの話や。当然、人命が失われている以上、それに対する謝罪と補償は十二分にしたうえでの話ではあるが。

 俺が彼を惜しむのは、記者としての仕事ぶりにある。イラク報道に関して、毎日新聞はかなり優秀な記事を配信し続けていたと俺は評価している。写 真提供として海外通信社のクレジットを併記した記事が多い中、この記者が送ってきた記事や写 真は、戦場のかなり危険な部分にみずから踏み込んだものが多かったと記憶している。軽率さが招いたと前述したが、軽率さばいわば好奇心の裏返し。それはむしろ記者としては大切な条件と言っていい。

 某全国紙の幹部に聞いた話だ。イラク攻撃間近の時期、部下の記者に「行ってくれるか?」と聞くと「考えさせてください。妻と相談して」と逃げるのが大半だった、と。よく語られる話だが、現在のジャーナリストの質は明らかに低下している。取材対象への好奇心はおろか、記事の書き方まで均質化している中、この記者はみずからの意思でイラク入り。開戦から現在まで現地に腰を据えて取材を続けてきた。その事実だけでも評価すべきや。

 人間は間違いを犯す。間違いこそ人間味である。問題は事後、どれだけ潔い態度が取れるか。この記者は事の次第を正直に話し、反省していると聞く。接見した毎日新聞の幹部に泣きじゃくりながら、わびていたという話もある。実に人間的やないか。 軽率と不用心ではあったが・…

 

 一部の週刊誌は、この記者がアメリカに批判的な記事を送っていたとか、その内容のよしあしなど、いわば思想性にまでさかのぼるような記事を展開している。そこまで大げさな問題か、これが。まったくお門違いもはなはだしい。そもそもヨルダンと日本は、友好的な関係にある。現場を視察したヨルダン国王と王子も「これは事故だ」と言ってくれている。さらには死亡した空港職員の遺族さえ「神が彼を許す。容疑者を憎まない」と表明。ヨルダン政府も国際法上の手続きに基づいて処理するらしい。まあ、飛行機の中で爆発せんかっただけよかった、というもの。

 何はともあれ、毎日新聞はこの温情的扱いにこたえねぱいかんな。しかしまあ、こんな話をすれば、人が死んでいる以上、軽率で済まされる話ではない!と青筋立てるアホもいるやろ。しかし、それを言うなら、彼が不発弾を拾ったということに対する原因はどこにある?こんな危険なものをばらまいたヤカラがいたからこそ、今回の悲劇が起こったんやないか。となれば、記者の不用心以前の問題。

 最大の責任は当然、アメリカや。しかも、今回彼が拾ったクラスター爆弾は、非常にカラフルな色をしているという。現地の子供が興味を持って、つい拾って犠牲になっている、ということも恐らくあるはずだ(こういうことは報道されない)。軽率にもそれを拾ってしまった子供を責めることができるか。

 爆弾を製作した側は、ハナからそれを狙っている。むしろ、メディアはこんな危険な爆弾をばらまいたアメリカの罪状を追及すべきなのである。俺は今、イラク戦争で米軍に武器を供給した軍需産業への訴訟を考えている。製造者責任を間う裁判を米国内で起こすというわけや。原告は米国籍を持つ弁護士あたりで。誤模や不発弾で大勢の民間人が死債したのは、兵器を供給したメーカーが命中卒などの性能を偽って米国政府に売りつけた結果 であり、賠償責任を追及するというのがその趣旨である。裁判費用を募るためのファンドも立ち上げる。裁判に勝ったら出資額に応じて利益を分配するというものだ。詳細が決まれば、あらためて告知しよう。

 この観点から言えば、いっそ毎日新聞もみずから原告になり、米国政府を訴えてもいいくらいやないかと、俺は思う。確実に爆発していれぱこんな事故は起こらなかった、とな。爆弾の横っ腹に「爆発のおそれがありますから拾わないでください」とでも注意書きせい!と居直るのも、訴訟大国を相手にするにはいい方法かもしれんぞ(笑)。日本はイラクの戦後処理で莫大な金をむしり取られる。それを考えれば少しぐらい取り返そうとしてもばちあたらんやろ。

 

 

 

今週のテーマ

ヨルダン空港手荷物爆発

 ヨルダンの首都アンマンの国際空港で毎日新聞写真部・五味宏基記者の手荷物の中の金属製物体が爆発。空港職員1人が死亡した。物体は米軍のクラスター爆弾の一部と見られ、五味記者は戦争取材の記念品として拾得した、とのこと。

 

 

 

 

 


 

 

 

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