足枷装着が憲法違反であるとして田中義三が起こした訴えを受けて、本日(3月29日)チョンブリ地方裁判所において行政裁判が公聴会形式で行われた。その結果、チョンブリ裁判所は本件についての最終的判断を憲法裁判所にゆだねる判定を出した。なお、チョンブリ裁判所の審理付託通知は、今週木曜日(4月1日)ころまでにはから憲法裁判所へ届くものと思われる。

以下は、本日の証人として出廷したチョンブリ刑務所所長と田中義三の証言内容の要約である。


チョンブリ刑務所長の証言:

【検事の質問に答えて】


  足枷の装着は刑務所法にしたがってやっているものです。足枷を着けないならば、独房に入れるしかありません。独房に入ると、食事やシャワーのような決まった時間以外は独房から出られません。足枷は重刑になるような殺人・麻薬・強盗などの事件の容疑者で、逃亡するおそれのある者にはめます。田中義三氏に関しては、警察から「赤軍であり、ハイジャッカーであり、重要容疑者であるので、厳重な監視をしてもらいたい」という要請が文書(レター)で送られてきました。田中氏の過去については、日本大使館からも同様のことを確認し、そのうえで足枷を付ることにしました。


  日本大使館から過去に田中氏の足枷をはめられたところに傷ができて化膿しているので、足枷をはずしてくれという要請があったが、調べてみたところ、そのような傷はなかったので、足枷ははずさず、足枷を大きいものから一番小さいものに取り替えた。刑務所内では、タイ人に対する扱いよりも外国人に対する扱いの方がむしろなんでも優遇されています。


  3月12日に下院(日本の衆議院に相当)の人権擁護委員会の人達が田中氏の足枷について調査に来たが、そのときも先に述べたのと同様の足枷装着の理由を申し上げました。タイの刑務所法にのっとって足枷を着けているのです。刑務所ではタイ人も外国人も平等な扱いを受けますが、囚人の刑が確定したときに足枷がはずされます。しかし、その後も逃亡のおそれがあるとか、足枷を着けた方が良いと判断される場合には、引き続き足枷を装着したままとなります。また、30年以上の刑が確定した囚人に関してはバンコクのバンクァー刑務所へ移送されますが、チョンブリ刑務所において過ごす移送までの期間は足枷が装着されます。バンクァー刑務所とは異なり、ここチョンブリ刑務所においては、看守の数も少なくは囚人を監視する環境が整っていませんので、足枷の装着は必要といわざるを得ません。しかし、足枷を着けたままで刑務所のどこへでも歩いて行けます。

【被告側弁護士の質問に答えて】

チャクリット弁護士:田中氏の容疑は何か知っていますか?
所長:詐欺罪と偽ドル所持です。

弁護士:田中氏が第1審の裁判中であることも知っていますか?
所長:知ってます。

弁護士:憲法第33条は、囚人といえど刑が確定するまでは無罪とみなされ、その扱いも同様の者でなければならないと定められていることを知っていますか?
所長:知っています。

弁護士:あなたは仏歴2479年に発布された刑務所法の14条にしたがって田中氏に足枷を着けているということですね?
所長:はい。

弁護士:しかし、その2479年の刑務所法14条は、現在の憲法の精神に合致していないのではないですか?
所長:そんなことはありません。2479年の刑務所法14条は、発布以来改正されたこともなく、現在も効力を有しています。それに、憲法31条第3段落に、法律の規定にもとづく権限によって行動する場合のことが明記されているので、憲法違反とは考えていません。先ほども申しましたが、チョンブリ刑務所は監視している役人が146人に対して、囚人は3600人を超えています。監視態勢が十分ではないのです。もし、警察からの要請がなかったならば、この事件の外の被告と同じ扱いをして足枷は着けなかったでしょう。ハイジャッカーであるということは、日本大使館から、そして本人からも聞いて知っています。

弁護士:ということは足枷を着ける理由は、田中氏のタイ国における容疑に関連したものではなく、外国で起こったことに関する理由でつけているということですね?
所長:はい、そうです。


田中義三の証言:

私は足枷を着けられてから今日にいたるまで、何故私に足枷が着けられなければならないのかについて正当な理由を聞かされたことは一度もありません。西暦1996年4月1日に入所して、1996年の12月中旬まで足枷は着けられていませんでした。その間私は一度も逃げようとはしませんでしたし、監視の役人とも問題を起こしたこともありません。足枷を1996年12月に着けられたとき、それを着けにきた役人が「あなたに足枷が着けられなければならない理由がわからない。着ける必要がないと思う。しかし上からの命令だから、それに従って着けるしかない」と私に言いました。先ほどの刑務所長の証言では、大きいものから小さいものに替えたと言っていましたが、私の足枷は一度も取り替えられたことはありません。

(証言は以上で終了)

なお、本日チョンブリ裁判所に提出された訴状において、田中義三は、「第1審の判決が未だ出ていないのに、あたかも有罪判決を受けた者のごとくこの2年4ヶ月の間、1日24時間足枷をはめられたまま、甚大な肉体的・精神的な苦痛を受け続けている。私へのこのような扱いはタイ国憲法に対する違反である」として、昨年4月に発布されたタイ国新憲法の以下の条項が引用されている。


第4条 人間としての尊厳、人の権利および自由は保護される。

第6条 憲法は国の最高法であり、法律・規則あるいは規約のいかなる規定も本憲法に抵触あるいは相反することはできず、そのような規定は施行することはできない。

第30条 人は法的に平等であり、対等に法律の保護を受ける。
     男女は平等な権利を有する。
     出生、民族、言語、性別、年齢、心身の状態、経済あるいは社会的な状況、信仰、教育、または憲法に抵触しない政治信条の違いにより人を不公正に差別することはできない。他人と同様な権利および自由の行使の推進あるいはその障害除去のために国が講じる措置は、第3段落にもとづく不公正な差別とはみなさない。

第33条 刑事事件において、容疑者あるいは被告には罪がないものとまず仮定する。有罪判決が確定するまではその者を犯罪者のように扱うことはできない。

(足枷問題についての報告は以上)