
改革解放は同時にヤクザも解放
1月半ばに中国から香港、そして今年の12月20日に中国に返還されるマカオに行ってきたのだが、中山市というのは辛亥革命の指導者として知られる孫文が生まれた、マカオからは2時間ぐらいのところにある、普通の地方都市なのである。
最初に行ったときの、そこの印象というのは、人が溢れかえるようにたくさんいて、しかも物乞いがものすごく多いということだった。
小さな川があって橋がかかっていて、その橋の真ん中を車が通って両サイドに歩道があるのだが、その歩道のところに、物乞いがとても多くいた。思わず「あっ!?」と叫んでしまうような印象だったのだが、一方ではその橋を渡ると、橋は市の中心部にかかっていて、中心部は商店街みたいなところにつながっていて、それがものすごく活況を呈している。
物乞いがいっばいいるのと好対照に、商店街はものすごく活気づいていて、深せんとか上海といった経済特区(特別区)だけでなく、地方都市にまで「改革開放」という経済政策が完全に行き渡っているという印象だった。中国では、もう社会主義経済体制に後戻りできないところまで、資本主義化が進んでいるとみてとれた。商品も結構高いし、消費関連品も高いけど、物はふんだんにある。
日本人はほとんど来ないレストランに行ったのだが、メニューは豊宮だし、これが緒構高い。ということは相応の収入があるから消費できるということであって、中国の都市と農村との貧富の差が言われて久しいのだが、地方都市あたりの経済が都市レベルまで来ているなということが明らかだった。
マカオのマフィアは中山市出身というのが多いのだが、アウトローの社会では香港、マカオ、そして中国と一体でアウトローを形成し始めている。社会主義の時代は中国本土にいるアウトローは住みづらかっただろうが、いまは大手を振って住んでいるという感じがあって、改革開放は同時にヤクザの改革解放でもあるのだ、という印象を強くした。
この数年間の、マカオのカジノの利権をめぐる、アウトローの抗争というのは凄かった。利権というのは、中国返還後のものと返還までのものがあるのだが、恒常的なものとしてある返還後の利権は、軍とか公安とか党とかが一体となった利権とみていいわけで、いまのマカオの利権というのはポルトガル領マカオとしてのアウトローのシノギなわけだ。それが返還となってタガが緩んで、いま利権争いで抗争が激しくなっている。
マカオの場合は、警官が千人くらいいるのだが、その8割がヤクザ関係者だといわれている。抗争事件というのぱ必ず警官が何らかの形で関与しているわけで、警官とマフィアとの銃撃になると、実は逮捕しに行っているのは、反対側のマフィア系列だったりすることがよくある。
マカオの隣りに珠海という経済特区があり、ここは返還後はマカオと合併するのだが、中国人はノービザで身分証明書を示せば行き来できる状態なのである。一咋年7月の香港の返還で、返還ということは経験ずみであって、国民レペルでは「マカオの返還」ということはもうとっくになされているという雰囲気だった。
アメリカにおける戦争の選択肢
中国というのは、中国共産党を中心として毛沢東思想に統一されていて、ユーゴスラビアだったらチトーに、ルーマニアだったらチャウセスクと偉大な指導者がいて、社会主義的なイデオロギーでもって統一してきた。つまり社会主義的なイデオロギーがあって、その基に単一的な国家があったときとには、いろいろな矛盾というのが押さえこまれている。ところがユーゴスラビアではチトーがいなくなって、社会主義体制が倒れた瞬間に、もともとあった民族的対立が一気に吹き上げてしまった。
中国の場合はどうかというと、完全に改革開放に動き始めている。社会主義国とはいいながらも、実はもう社会主義体制ではなくなってきている。そしてやはり部族間の問題は多くあり、将来はこれが噴き出してくるだろう。中山とか珠海といった豊かなところは、独立性を強めてくるのではないかと思われる。
どんな問題がこれから出てくるか分からないが、中国に行って、中国は決して安泰ではないな、という印象を強く受けた。
その中にあって、一番しっかりしているのはアウトローであって、キッチリ、シノギをしているなというのを感じた。国家が今後どうなっていくのかということを見つめながら、ちゃんと対応して、抗争事件をやっているという、やはりアウトローというのはしたたかなのだ。
もう一つアウトローの問題でいえば、日本のアウトローを中国系マフィアのアウトローが使うという逆現象も、今後出てくるのではないかと思う。向こうの方が圧倒的にパワーもあるし、また金もある。
マカオのカジノというのは、あまり知られていないのだが、ラスべガスよりレートが高い。世界で一番高い。ということは胴元に入る金も大きいし、必然的に利権争いも凄まじいことになる。
マカオというのは宗主国がポルトガルであって、ポルトガルというのは社会党が中心となった内閣ができたりして、社会主義国の扱いになっていたわけで、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と国交がある。マカオにも北朝鮮の直行便がある。だからクラブの姉ちゃんも含めて、北朝鮮からの出稼ぎが多い。その出稼ぎの姉ちゃんが蒸発したという話が最近は多い。本国に送金するのが厭になって、稼げるうちに稼いでドロンしてしまう。それが北朝鮮のいまの状態を表しているのではなかろうか。
北朝鮮の問題でいえば、最終的にはアメリカと北朝鮮の軍事緊張が高まっていくだろう。地下核施設の査察の問題では「2回査察」ということを、食料援助や経済制裁の解除とひきかえに北朝鮮は受け入れて、一応肩透かしを食らわせた格好になっている。しかしそれではと、アメリカは3回めを要求してくるだろう。それはイラクのときを見れば明らかである。米朝協議は6月まで続けることになっているが、それまでに大きな前進がないということになると、緊張は一気に高まっていくだろう。
それともう一つ、北朝鮮では4月から6月までというのは、食物の取り入れがない端境期にあたる。飢餓の進行が影響を与える可能性が大いにある。
アメリカ内部においては、ハードランディングという、要するに軍事衝突という考え方がかなり強くなり始めている。ソフトランディングよりもハードランディングの方がコストはかからない。いま韓国経済がパンクしているので、コストのかかるソフトランディングは、果して可能であろうか。
クリントンは議会を牛耳っている共和党を取り込むことによって生き延びてきたといってよい。つまり、軍事費を削って社会福祉に金をバラまくことをやってきたために、軍需産業ではリストラが物凄い勢いで進んでしまった。かなり強い風圧がクリントンに軍産複合体からかかっているといってよい。アメリカの大統領というのは、軍産複合体に手をつけたとときに、ケネディがそうであったように殺されている。
タカ派色の強い共和党を取り込んでいるということもあり、政権墓盤の強化を含めて、一回イラクのときのようにやった方がいいのではないかという選択肢は大いにありうる。
それと1月7日にユーロが発足して、意外とユーロに対する全世界的な期待感が高まっている。それは逆にいうと、アメリカのドルに対する反発が強いということの裏返しであって、世界の基軸通貨たるドルの地位を守るためにも、戦争という選択肢は必ず出てくるはずだ。