「突破者」経済学入門 最終回

週刊プレイボーイ 5/4 p191



新入社員よ、マフィア的サラリーマンを目指せ!

右を向けば、バクチ化された経済に一喜一憂する人々の群れ。左を向けば、リストラされて肩を落とす男たちが。バカとトンマがこんがらかって、出口が見えなくなった世紀末。こんな世の中で自由にひとやま当てる事なんてできるのか?できるんです!好評を博した短期集中連載・最終回は、いざというときの対処法。心して読め!

「まず、最悪の事態を想定しておけ!」

「春。フレッシュマンの季節---とか眠たいこというとる場合やない。みんな学校は卒業できても就職する先がなかなかみつからん。やっと、会社に滑り込んでも、今度は、いつ『クビ』いわれるかわからん。それどころか、会社そのものがいつ潰れるかもしれん・・・というんやから。サラリーマン諸氏にとっては、なんとも難儀な時代になったモンや。「経済ヤクザ大国」アメリカの株バブルは自ら世界を巻き込んだバクチ経済のしっぺ返しで、ぼちぼち年貢の納め時(六月当たりかな?)。『企業舎弟国家』日本の経済も、大量の隠し不良債権が表沙汰になって、崩壊してしまう(九月あたりかな?)。そのあたりの、経済構造や情勢について俺はこの連載の中で説明してきた。終身雇用。年功序列。これまでこの国で経済活動の基盤とされてきたシステムがいま、目の前でがらがらと崩れ去ろうとしている。会社や国、体制にいつまでもしがみついとったって、どもならん時代がやってきたということやね。」

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 文部・労働両者の調査により、今春卒業した大学、短大、高専、専修学校生の就職内定率が調査開始以来、最悪の結果となったことが明らかになった。大卒者の内定率ははじめて9割を下回り、3月1日の調査時点で、就職先が決まってないものは、大卒4万2千人、短大卒3万人に上ると推計されている。また、総務庁もこの3月30日、2月の完全失業率が4,6パーセントと史上最悪を記録したことを発表した。
 民間の調査機関である帝国データーバンクの集計によると、昨年98年度1年間の企業倒産件数は1万7497件。その負債総額は15兆1820億円で、これは戦後最悪の記録である。


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 「しかしな。俺らアウトローからしたら、こんな時代こそええチャンスなんや。混乱の時代にこそ、目線を変えれば儲けるすき間はいくらでも転がっとるんやから。


 例えば、バブルがはじけて経済がぼろぼろに陥っとるタイでは今、フリーマーケットが大盛況。バブル紳士が買いあさったベンツとかの高級車が4分の1くらいの値段でぼんぼん売りに出されよる。そしてそのマーケットを仕切っとる若い連中は、オッサンらを尻目に大儲けしとるわけよ。

 実際、この日本でも---前回もちょっとふれたが---今のご時世で大儲けしとる元R社のEさんとかの例もある。Eさんな、Y証券がやばそうやという情報を政治家のOから仕入れて、その株大量にカラ売りカマしたらしいんや。お陰で株価は暴落してしまい、Y証券はホンマに潰れてしもた。こんなん、単なるインサイダー取引やわな。しかしな、前回の最後にもちょっと言うたように、株取引に全くインサイダーでないものなんかありえんのや。どっかで自分だけの情報を仕入れたからこそ株の売り買いをするんやからな。そしてここまで仁義なきバクチ経済社会になってしまったからには、もうアウトロー的生き方をとるよりほかに無いということ。その最たる例がEさんと言うことやね。

 では、アウトロー的に生きるとはどういうことか?まず、最初にキモに銘じておかなならんのは、"常に最悪の事態を想定しとけ"ということや、ヤクザというのは、毎日いつ殺されてもおかしくないという想定の下に生きてるもんやからね。会社入れてホッと一息ついとるような甘ちゃんじゃ、早晩、潰されてしまう。むしろ、『この会社、潰すにはどうすればいいか?』くらいのことを常に考えとるようじゃなくちゃアカンというこっちゃ。」

「簡単にリストラされるな!知恵つけて、金ふんだくれ!」

 「そんなふうに発想を転換でけたら、リストラ宣告かてひとつのチャンスに転じられるんやで。実際、俺のしっとるなかに、会社のリストラ宣告利用してまんまと金儲けしたヤツがおる。N道路という土建屋ではたらいとったヤツやけど、そいつ、会社の談合資料とか粉飾決算の証拠、みんな握っとったんや。そんでな、いざ上司から肩たたかれたとき、にやりと笑ってこう言うた。『僕にそんなこと言っていいんですかねえ?』って。(笑)それで一生喰っていけるだけの退職金せしめたんやで。こいつ、連載二回目で教えたヤクザの行動原則---"居直る""脅す"を見事に実践しとるがな。

 つまり、君らもこいつのように会社の弱みを常に探しとけというこっちゃ。いざというときの武器になるからな。俺の若い衆に、流通大手のDにいたやつかいる。まだ30歳そこそこなのに会社の粉飾決済みんなもっとったで。なぜかというたら、今はどこも社内の情報がコンピューターでやりとりされよるから、その気になったら会社の極秘情報も簡単に手に入れられるやろ。せっかく会社がそんな環境整えてくれたんや。それを利用せん手はないわな。

 そういえば、管理職ユニオンの設楽(清嗣書記長)が、こないだオモロイこというとった。リストラされやすい人間というのは、上司からいざリストラ宣告されたとき、そのばではなにも言い返すことができず、家に帰ってから『俺は会社のためにこれだけ尽くしたのに』とかウジウジ考え込むようなヤツ・・・というわけよ。常に最悪の事態に備えていないヤツ。その場で瞬間的に反応でけんようなヤツは、会社もリストラ要員として最初からリストアップしとるということやね。」
     
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 東京管理職ユニオンは、従来の企業内労組とは全く趣を異にする個人加盟型の労組。リストラの嵐に直接さらされる中高年管理職の相談を受けることも多く、いわばこうした人たちの"駆け込み寺"的存在ともなっている。同労組らが昨年3日間だけ開設してみた『倒産・リストラホットライン』には、合計368件もの電話相談が殺到したという。

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 あと、上司とのやりとりも全部テープにとっておくことも重要。例えば、大手電機メーカーNの社員で、会社の激務でノイローゼになっってリストラ要員にされとるヤツかおるんやけどそいつに俺は、こうアドバイスした。『僕が病気だからクビにしようとするんですか?』いうて、徹底的に上司に"ゴネろ"ってな。病気を理由に退職勧告したら法律違反なんやから。相手がシビレを切らして『うちは病人雇っとる余裕なんてないんじゃ!』とでもわめいてくれたらしめたモン。そこでおもむろにテープをとりだしてニッコリ笑ろうたらええんやんか(笑)。

 とにかくリストラ仕掛けてきたなあ、と思たら『ちょっと待ってください』言うて即座に電気屋に走ることやね。それから机の下でスイッチ押して『なんで僕なんですか?』とか、会話ウダウダひきのばして、相手から差別的な発言の一つでも引き出したれ。それでキミは一生安泰や(笑)。家に帰ってから、ウジウジ悩んでももうおそいんやからな。

 まるで、総会屋みたい?安心せい。社内総会屋やったら、めったなことでは逮捕されんから(笑)。

「会社がつぶれたら、その会社の社長になったらエエがな。」

 「考えようによっては、リストラどころか会社そのものの倒産かて一転チャンスにすることができる。そういえば、最近いい例があったな。去年、倒産した埼玉の電気店『カメラのニシダ』のエピソードや。

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 昨年7月21日、埼玉県大宮市そのほかに4店舗を展開していた電化製商品小売店『カメラのニシダ』が浦和地裁に自己破産の申請をして倒産した。負債総額は約11億円とみられている。もじどうり、「ある日、出勤してみると会社が無くなっていた」従業員たち。社長は夜逃げしてみつからないし、この不況の中、再就職先などそうそうにあるはずもない。そこで「あきらめてはいけない。」と団結した31人。労働組合に集まり、店の一階を開けて写真の現像、焼き付けを行うDPE店の営業を開始した。自分たちの手で職場を再建しようと言う元社員のたたかいは現在も続行中である。
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 「倒産した会社には当然、管財人がつくから、こいつら法律上は店を不法占拠しとる形ではある。債権の取り立てにヤクザが乗り込もうとしたこともあったそうや。建物内にだれもおらんようになったらその間に差し押さえられてしまうから、奴らは夜になっても全員帰ってしまうわけにはいかん。代わりばんこに店に泊まり込んでむじんにならんよにしとる。そうして営業を続けとる訳よ。



 けっこう売り上げはあるという話やで。あほな社長のせいで会社が潰れ、路頭に迷うハメになった人間が『僕たちの手で会社は再建させます』いうて頑張りよるんや。日本人てそんな話大好きやろ。そらあ、周りからも『頑張りや』と評価高うなるがな。また、そいつらもともと営業やってたんやからやすい仕入れ先もようしっとるし、お得意先もいっぱいある。債権者かて、店が無くなって貸した金がかえってこんようになるよりも、そうして営業続けて少しずつでも金返ってきた方が、ええにきまっとるがな。俺、こいつらうまいこと店立て直すことでけると思うで。


 そういえば、20年近く前、偽装倒産したある自動車教習所の従業員が、その施設を占拠して金を集め、運転技術をやすくおしえよったという話もあった。もちろん実技免除の指定は外されとるから、そこを卒業したってすぐ免許がもらえるわけやない。それでもとにかく安いから・・・言うことで、結構客は殺到したらしいで。結局、そいつら13年頑張って黒字経営にした挙げ句、もとの経営者に売り飛ばして大金カッパぎよったんや。



 このように会社の倒産というても、うまいこと立ち回れば自分が起業者になれる絶好のチャンス。機会とか設備も全部のこっとるんやから、一から立ち上げるよりずっと楽なわけよ。俺も家業の解体屋潰したとき、こんな風にうまいこと若い者に引き継がせとけばよかったなあとおもうで俺さえ全部罪ひっかぶって身ぃ隠しとけばよかったんやから。まあ、さすがの俺もまだ30代やったからなあ。あのころの俺よりもアウロトー的に頑張りよるヤツが、最近ようけでてきよるゆうことやな」

 
「マフィア的サラリーマンて、こんなんや!」

 「どや。社会にでてもお先真っ暗とおもっとったフレッシュマンらも、ちょっとは元気でてきたんとちゃうか?ようは、発想の転換。アウトローの時代なんやから、アウトロー的発想さえすれば道は自ずとみえてくるんや。

 例えば、俺の知ってる連中が"プロジェクト100"という集まりをつくっとる。単に全員前科者で、みなの懲役を合計すれば100年になるという意味なんやけどな(笑)。そいつらシャバにでてもども雇ってはくれんし、いつまでも公安にマークされとるしで、どうにもしゃあないわけ。そこで、そんならみながやりたがらん3K(キツイ・キタナイ・キケン)の仕事に活路を見いだそうと考えた。

 今んとこ軌道に乗ってうまくいきそうなんが、寝たきりの老人に三度の食事を宅配するサービスの会社。介護老人を抱える家族と契約して、栄養士もつけて、そのジジババ個人にあった献立を考え、暖かいメシを三度三度、出前で届ける会社を作ったわけよ。元暴走族の兄ちゃんやとっとるから運転の腕も確かやし、な。最初の二年は赤字やったらしいけど、そんなん何十年も刑務所におった時のことかんがえれば、なんてことないがな。そのうち、経営も上向いて黒字に転じてきた。頼もしい話やないか。 

 最近、『サラリーマン金太郎』とか言うマンガがはやっとるようやが、あんなんじゃまだまだアカン。あの主人公、組織に楯ついとるようで、結局は企業内部の小物に刃向っとるだけやないか。アウトローいうのは、そんな組織のリクツなんか最初から眼中にないもんなんや。



 戦後政治思想史のくさわけでもある丸山真男〔故人)というオッサンが`49年に書いた『軍国支配者の精神形態』という論文で『アウトロー』と定義しとる。一定の職業に持続的に従事する意思と能力の欠如A破天荒な仕事への追求B規則的労働と定期的収入への無関心と軽蔑非常事態における思考形態が日常的な価値判断基準などなどとな。


 『非常事態云々〜』という一文は前にもいうた"常に最悪の場合を考えておけ"ということやね。
 『破天荒な仕事を好む』なんて、このご時世、どんな仕事しとってもあてはまる(笑)・・・こういったらメルクマール、きみらがこれから企業倫理を突破する時に参考になるんとちゃうか。『死ぬ気で働け』、会社いうとこは、そんなことを平気で社員にいうてくる。それに安易に『ハイハイ』答えとったらアカンで。あいつら、その一方で『会社は家族。社長は親も同然。』とかもいうてくるんやから。気持ち悪いなあ。親が子供に『死ね』というかぃ!?こんなまやかしにダマされたらエサにされるだけ。『そんなら、もし死んだら何をくれますか?』ぐらいのこといいかえさんかぃ。過労死や職場イジメによる自殺でサラリーマンもようけ死による世の中や。会社に殺されたって、よほど裁判でうまくやらん限り一銭もでんのやで。自分の命はるんやったら、それなりの代償はカッチリいただかな。バクチ経済社会では、自分の命も証券とおなじなんやから。

 そして、どうせ偽造家族で組織の結束図るんやったら、マフィアみたいな人と人との顔の見える"血の結束"をせんか。マフィアの世界で裏切りは死や。だから裏切らん。これが信頼となるわけやね。そうしたマフィア的人脈を会社の内外に網の目のように張り巡らせておくこと。最低限これさえやっとけば、そうそうに潰されることはないで。

 なんか最終回ゆうことで、だんだんオジンの説教句作なってしもたな。ガラにもなくせっかくの闘い方のコツ、バンバンひとに教えてしもた。ちょっとばっかし文化人の間で仕事しすぎて勘が狂ってしもたんかもわからんな。また金儲けのネタも転がり込んでくることやし、そろそろ俺、またあっち戻るわ。フレッシュマン諸君もあんじょう気張って、せいぜいもうけったってや。まあ、あんまり成功しすぎると、そのうち俺がカッパぎに現れるかもしれんけど(笑)。」



この雑誌は若者向けなので、新入社員に対して語ったかたちになったが、実は、本当にこういうハナシがひつようなんは、おっさん連中やとおもう。新入社員というのは日本の会社では30代まではうまいこと働かせたら会社の方が儲かるんや。しやから、まだおっさん世代に比べるとクビになりにくい。会社からいうたら、40歳以上は3人に2人はいらない。45歳以上というのは一人もいらない(^^)まあ、クビを切る側の自分以外は...というのが本音や。そうしてねらわれとるのがおっさん連なんやが、このトシまで会社でサラリーマンやっとると、社畜根性が染みついて、リストラ言われてショックでボーゼンとしてるうちにクビきられてまいよる。この本はわしと設楽がそんなおっさん連を指導して、ケンカのやりかた教えた実例集や。

若いやつはこれよんで、自分がこうなったときにまけんようになるにはどうすればええか考えてみい。なんやったらレポート送ってきてみ。当ホームページの読者に限り採点したる。テーマは「今の自分の会社をつぶすにはどうすればよいか?」や。それで「優」とれたら、まずリストラはされんわ(^^)

(5月9日 宮崎 学)


「敗者復活」 幻冬舎より発売中。